副住職の「歳時記」vol.06 2021年(令和3年)9月 秋季彼岸会
伊藤 悦央
聖号十称
日本の仏教は、釈尊の説いた教えの中で何を重要とするかの違いで、様々な宗派があります。間違ってはいけないのは、各宗派の開祖は宗教を創造したのではなく、仏の教えから選び取ったということ。対機(たいき)説法(能力の違う個人に応じて教えを説く)の理念があるように、選び取る行為自体は大事なことなのです。
『法門は互角の論なりしかれども、機根(きこん)比べには
源空(げんくう)勝ちたりき』
これは法然上人が京都の大原にて、他宗の高名な上人たちと浄土宗義について論議した「大原問答(1186年頃)」の時を語った御法語です。訳は「教説についての優劣はなくても、機根比べ(教えを信じる人の能力とそれに見合った教えか)には源空(法然上人の自称)が優れていました。」 この機根という言葉が、浄土宗信仰の一番の理由であり、その信仰を支えています。
比叡山で智慧第一と呼ばれた法然上人が、「釈尊と同じようには、自分では悟れない」と絶望をへて、辿り着いたお念仏のみ教え。どうぞ胸を張って自身の宗旨を意識してください。
至心合掌